2009年10月30日金曜日

三日月祭



地平線から三日月が浮かび上がるころ

やつらがどこからともなくやってくる。

ほら、ひとつ、ふたつ。。。

あるものは商店街から、

あるものは地下街の一角から、

森の奥から、海の底から、墓場から、

あるいはどこか裏の世界から。



やさしく輝く三日月がぼくたちを震い踊らせる。

人間も動物も植物も妖怪も精霊も夜空の下ではただの命。

いつもは形を変えてトボケているだけ。

そう、ただそれだけのことさ。



薄い月光に見つめられ、

いつもは憎たらしいおまえも、

気になるあの人も、

偉そうなあいつも、

意地悪な彼女も、

もはや何の区別もないのさ。



透明に輝く三日月がぼくたちを覚醒させる。

そしてみなは気づいてしまう。

これまでもずっと歌い踊りつづけていたということを。

ほんとのところ祭りも日常もありえないのさ。

そう、ただそれだけのことさ。



細い月光に照らされ、

うるさく吠え立てる隣の犬も、

車の下の黒猫も、

ベランダの蘭の花も、

庭に実っているパパイヤも、

もはや何の区別もないのさ。



美しく輝く三日月がぼくたちを酔わせる。

この歓喜が夢だろうが現実だろうが

そんなことは関係ないのさ。

これは魂の祝祭なのだから。

そう、ただそれだけのことさ。



秘められた月光に飲み込まれ、

裏山のカブトムシも、

台所のゴキブリも、

市場に集まる蠅たちも、

おじいちゃんも、おばあちゃんも、

もはや何の区別もないのさ。



怪しく輝く三日月がぼくたちを狂わせる。

どんなにシリアスに生きていようが

きみにもぼくにも意味なんてものはないのさ。

所詮ぼくたちはひとつなのだから。

そう、ただそれだけのことさ。



ぼくもきみも

あいつもそいつも

どいつもこいつも

永遠の物語を紡ぎながら

歌い踊りつづけ

祭りは果てること無く続いてゆく。

そうさ、ただそれだけのことなのさ。

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2009年10月20日火曜日

ナーダヨギの妄想



● Yoga:結合


意識をかたむけ

じっくりと音を感じる。

内から出てくる音が耳を介して内に帰ってくる。

・・・そしてまた内からそとへ、そして内へ・・・

循環が始まり出す。

雑でムラだらけだったものが

ゆっくり同じことを長時間反復することによって

次第に純粋に、

繊細で混じりけのないクオリティーになってゆく。

それにともない内と外の区別も消え去ってゆき

残るは音のみの境地。

音に満ちあふれいるというのに

そこは何故かとても静かだ。




● Asana:


音を出す毎に感じるエネルギーの動き。

手のひら、指の先端、指の腹、肘、肩、

各々の関節が伸縮している感覚。

エネルギーの流れを感じていると

それに伴って神経の先端が発達して伸び広がってゆき、

これまで繋がっていなかった組織が

分裂してゆく神経細胞をとおして

徐々に交流を行うようになり活性し始める。

毛細血管が広がり始め、

そこに筋肉の帯がうっすらと膜をはって

伸び縮みを繰り返しているうちに

有機的な反応が現れ、

物理的な肉体は発達してゆくのだ。

エネルギーが流れてゆくところ、

物理的な現象がそれに伴う。

音、エネルギー、肉体はひとつだ。




● Prana:


単調なリズムを繰り返す。

リズムをひたすら見つめ注意をはらいつづける。

リズムは息づきはじめ、

呼吸を繰り返しているうちに生命を帯びてくる。

生命を帯び始めた音はますます艶を増してゆき、

有機的な呼吸を繰り返す。

そうしているうちに全身全霊が存在に溶け込んでゆく。




● Yantra:


目を閉じて音を見つめる。

音の芯はくっきりとしなやかな輪郭を表し

音の余韻は薄い膜のようにやさしく、

薄い虹色の光彩となって輪郭の周りを包み広がってゆく。

虚空に溶け込んでゆく光彩を見つめているうちに

わたしは何者でもなくなってゆく。




● kalpa:永劫・Timeless


鼓動は過去から現在、

そして未来へと螺旋を描いて回り続ける。

どのくらいの時間が過ぎたのだろう。

次第に螺旋のはじまりと終わりは接近しあい、

はじまりは終わり、終わりははじまり。

遂には分別が消滅する時がやってくる。

この瞬間は永遠だ。

そこには時間というものはもう存在しない。





2009年10月11日日曜日

Clear Light



たとえば

埃まみれの深い井戸が

透明でクリアな光に照らされ

ちっちゃな光が

その奥からちらりと反射するのを

見るようなとき




私は知る

私がこの世界で表現していることは

私の万分の一にも満たないのだということを



2009年7月31日金曜日

夜風



さっき雨が降ったばかりなのに

水溜りの中では月が揺れている。

周りの木々は青々とざわめき

夜だというのに

どこかでセミがないている。

2009年6月15日月曜日

欠伸


「もううんざり」って

そりゃないぜ、あんた。

こうしてぼくたちが日常の退屈さに埋もれている間にも

夜の淵ではトラツグミが虚ろにさえずり

谷間では青白い蕾が夜露を振り払いぶるぶる震えながら

夜明けを待ちわびていることだろう。

今夜はやけに暑いな。

隣のラジオはうるさいし。

ああ、まったくもう。



2009年6月13日土曜日

黎明


明け方にはまだ早い時間に目が覚めた。

外に出てみると裏山からの生温かい風が艶めかしく肌に絡みついてくる。

妙に甘くて官能的だ。

植物たちは夜を徹して一体なにをやっているのだろうか・・・。

こんな夜は裏山に登ってみるのもいいけど、

街を彷徨くのも悪くないだろう。



いつもは混雑している駅前の交差点。

静まりかえった沈黙の中、音もなくやって来た自転車が通り過ぎてゆく。

まだ暗いのに、信号機の上では一番鳥がさえずっている。

全身全霊を使って熱心に歌っているのが妙におかしい。

コケて落っこちたりしないのだろうか。

ふふふ。



夜が次第に明けてゆく。

空気の質も変わってくる。

ぼうっと蒼白い光がビルの間を縫って広がってゆく。

うっすらと街に影が差し込み、

車の振動が街を満たし始め、

やがて退屈な社会が目を覚まし始める。



2009年6月10日水曜日

6月雨



6月の雨が降り注ぐ。

あれほど熱く情熱的に私を突き動かした想いも

いずれは溶けてしまうのか。

決して冷めることなどないと確信して

一瞬一瞬に火花をまき散らした希望と不安。



雨が私の体を濡らしてゆく。

沢山の言い訳を作りながら

あれこれ手を変え品を変え色々な方法を試みてきたけれども

薄々気が付いていたんだ。

もうトボけ続けることはできないと。



遠くから救急車の音が響いてくる。

もはや期待するものなども無く

絶望すら感じることもなく

ただ虚無がひろがるばかり。

ふと気がついてみると、私はここに居る。



じっと独りただずんでいると

空気さえ私の一部となり

私は雨の中に溶け込んでゆく。

私はいつからここに居るのだろう。

雨はいつまで降り続けるのだろう。